ひねくれ作家様の偏愛
③
内山田先生のパーティーは六本木で行われる。
プリンセスタワーホテルのバンケットルームで盛大に開催されるあたり、内山田先生の我が社への貢献度がうかがえる。
本人は30代後半の物静かな男性で、とてもファンタジー色の強い学園ものを書く人には見えない。
そもそもライトノベル自体を、開きもしなさそうに見える。
昨年まで私が内山田先生の担当だったけれど、今は部下の佐々木くんが担当している。
内山田先生は佐々木くんにお任せ。
私としては主役より、海東くんのセルフマーケティングの方が気になる。
きちんと周囲に挨拶できるだろうか。
コンシューマゲームを担当するソフト企画グループには、なんとしても海東智の復活をアピールしなければならない。
母親みたいな気持ち。
こんなに肩入れすべきじゃないんだろうけど。
受付が始まって間もなく、海東くんは真新しいスーツで颯爽と現れた。
普段よりかっちりとセットされたヘアスタイルも似合っている。
どこぞの御曹司かといった雰囲気だ。
彼が会場に現れた瞬間、幾人もの人たちが彼を振り返った。
空気が変わる。
魅力的な人間が現れると、賑やかな場は一層華やぐ。