ひねくれ作家様の偏愛
「原稿を取りにきたよ。飯田の代わりに」


海東智(かいとうとも)はどうでもよさそうにあくびをした。

焦げ茶色に脱色された髪は、昨日サロンで整えてもらったかのようにさらさらと綺麗だ。
小さな顔、細身の身体、長い手足。
ソファに座る姿は雑誌モデルみたい。


「飯田さんって桜庭さんの同期なんですよね。自分で原稿取れなくて桜庭さんに頼むとかどうしようもない人だ」


「きみが言ったんでしょ。私に取りに来させろって」


「飯田さんのあの愚鈍な感じ、どうにかなんないんですか?ヒラ社員感半端ないですよ。同期の桜庭さんはもうチーフなんでしょう?」


「アプリグループの規模はうちの編集部の三倍。層の厚さが違うの。……で」


話がそれっぱなしなので、私は修正を試みる。


「原稿は?」


海東くんは漫画をパタンとお腹に置いた。
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