ひねくれ作家様の偏愛







東京駅から上越新幹線に乗る。

本庄早稲田駅で下車し、バスで在来線の駅に移動。
そこから時間二本程度の電車に乗り継ぐ。
目的地は駅から遠い。

住所に一番近い駅で降り、今度は本数の極端に少ない市営バスに乗る。


私が向かっているのは海東くんの実家だ。


家にいないから実家では……という安易な想像がひとつ。
あとは彼があの日言った言葉が気になっていた。


『初めての居場所』


裕福な家の生まれで、何不自由なく甘やかされて育ったお坊ちゃん。

それが私の中の海東くんのイメージだったけれど……。

もしかして、的外れな想像だったのかもしれない。

やってきたバスに乗り込み、1人がけの座席に腰掛けた。
薄く開いた窓から熱風が吹き込んでくるけれど、その勢いが気持ちよかった。

青々とした稲穂たなびく田園風景が美しい。
山にかかる立体感ある入道雲。
東京よりも色の濃い空。

綺麗なところで育ったんだなぁと思う。
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