ひねくれ作家様の偏愛
「申し訳ないけど、すぐに会社に戻らなきゃいけないんだ。ごめんね」


「……」


言い直すと、海東くんはあきらかに不機嫌な顔でこちらを見ている。

あー、またしばらくストライキを起こされるかもしれない。
気に入らなければ何ヶ月も書かなくなってしまう彼。
でも、それじゃマズイのだ。せめて、アプリの方のシナリオは書き続けてもらわないと、海東くんの居場所は本当になくなる。


「じゃあ、掃除」


「はい?」


「読むのは後でもいいんで、この部屋だけ掃除していってください」


海東くんのリビングダイニングは、おそらく20畳はある。
シンプルだけど私にはわからない海外ブランド家具で固められたセレブ空間だ。
普段は家事ヘルパーのおばさんが週2回来て、家中を綺麗にしてくれているはずなのに。


「ヘルパーさんは?」


「風邪でダウンしてます。俺、家の中のものを触らせる人間は限ってるんですよ。だから、代打の人間は追い返しました」
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