ひねくれ作家様の偏愛
海東くんはご実家にいるだろうか。
会えたら言うことを考える。

まずは謝りたい。

肝心なことを言わないまま、パーティーの夜は別れてしまった。

彼の愛情を知って、受け流してきたことを詫びたい。
「いつか捨てられたら」なんて恐怖から、自分を守るために。

そんな謝罪で、彼が私の方を向いてくれるとは思えない。
だけど、私だって言わないわけにはいかない。

彼が書くか書かないかは別として、彼を好きになったことに対してけじめをつけたい。
彼と抱き合った責任を果たしたい。

バスで25分。
バス停から更に少し歩くと、スマホのマップは示している。

実家を訪ねるということもあり、パンツスーツにシャツ。パンプスという格好だ。
歩くならせめて、いつものバレエシューズにしてくればよかったかもと、今更後悔する。

かかとが痛くなりつつ歩き、やがて、住所である場所に到着した。


「はぁぁ」


思わず感嘆のため息がもれた。
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