ひねくれ作家様の偏愛




JRの改札内を走った。
人様に迷惑と思いながらも走った。
パンプスのおかげで、かかとはひどい靴擦れだ。駅で買った絆創膏も、こんなに走ったらすぐに擦れてはがれてしまうだろう。

山手線に飛び乗る。新橋でゆりかもめに乗り換え、青海の駅へ向かう。
駅の北口を飛び出し、ヴィーナスフォート側から入る。トヨタのショールームを抜け、デッキに出ると観覧車を見上げる海東くんの姿があった。

振り出した小雨も気にならないようで、傘も差さず立っている。


「海東くん!!」


私は探し続けていた姿に向かって駆け寄る。
海東くんは少し驚いた顔をした。
きっと私の格好がひどかったからだろう。

真夏に一日中駆けずり回り、髪は普段の倍以上にボサボサ、足を引き摺り、スーツはヨレヨレ。ちょっと迫力があったかもしれない。

向かい合い、私はきっぱりと言う。


「観覧車に乗ろう」
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