ひねくれ作家様の偏愛
「お母さんのお話、私には大事な話だったよ」


海東くんは黙っている。
引き下がるまい。私は改めて頭を下げ直した。


「私があやまりたいのは、きみの愛情を信じていなかったこと。飯田の前で海東くんが好きって言えなかった。他の誰にもきみへの気持ちを明かせなかった」


「俺との関係は恥ずかしいですもんね」


「……違う。いつか、きみが私から離れていくと思っていたから」


海東くんが意外そうな表情になる。
私の答えは予想外のものだったらしい。


「それは、俺が桜庭さんを捨てるって意味ですか」


静かな問いに私は頷く。


「私を好きだなんて今だけの気の迷いだと思っていたから。きみと私じゃ釣り合わない。きみに振られた時、ダメージが少ないように、防衛線張ってた。きみを避けてるように見えたのはそのせい」


「随分と卑屈で卑怯ですね」


「うん、きみに嫌われても当然」
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