ひねくれ作家様の偏愛
こんな風に言われて、どうしたらいい?
私は泣きながら最後の確認をする。


「……私……海東くんと釣り合わない。作品の役にはたたないし、年上だし、地味だし、ダサいし」


「役にたつかどうか決めるのはあんたじゃない。俺です……。桜庭さんがいなきゃ、何も書けない」


「こんなの依存しあってるだけじゃない?」


「恋なんて大方依存です」


「私、これ以上海東くんに夢中になりたくない。きっと頭おかしいんだ。きみの全部が欲しいんだよ。作品も、きみ自身も」


「俺のために狂ってくれるなら、こんなに嬉しいことない」


「別れなんて切り出されたら、包丁持ち出しちゃうかもよ?」


「何の証だてが必要ですか?あんたが望むなら、小指だろうが脚の一本だろうが、命だって差し出しますよ」


べそべそ泣き続ける私を、海東くんがさらに引き寄せる。
背がしなるくらい抱きしめられ、息が詰まる。


「あんたの不安を消せるなら、なんだってあげます」


海東くんの言葉は力強い。
自信と情熱に溢れた言葉が、私の弱い心を抱き締める。
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