ひねくれ作家様の偏愛
「だからもう、卑怯な予防線は張らせません。俺が好きなんでしょう?」


私は涙を拭い、彼を見つめた。
もう一度、私には大好きな人に告白する機会が巡ってきたのだ。


「うん、海東くんが好き」


「俺といたい?」


「……いたい。ずっと隣にいたい」


「俺もです、桜庭さん。出会って5年目にして、ようやく意見が合いましたね」


海東くんが笑った。
目の前の綺麗な笑顔を見たら、またしても泣けてきた。

こんなはずじゃなかった。
海東くんの手を、今度こそ離すつもりで覚悟を決めてきたのに。
逆に強く手を握り返され、後ろ髪を引っ張られながら強引にキスされた気分だ。


観覧車が地上に降り立つ。
私はメガネを拾い、慌てて涙を拭う。

先に降りた海東くんがバランスを崩さないようにと、手を差し伸べてくれる。

私はためらわず、その手をとった。
よろめきながら、地上に降り立つ。
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