ひねくれ作家様の偏愛
「あんたがバカなのは、知ってます。俺も勉強になりました。バカで弱虫の恋愛初心者は、もっと強引に溺れるくらい愛してやんないとわかんないんですね。疑う余地がないくらい。俺が慎重に優しくし過ぎてたのが問題なんだと、よーくわかりました。これからは反省を踏まえてガンガン行こうと思います」


「……もう」


「さっきの返事は要りません。そもそもあんたの意見なんか、俺には必要ないんでした。
さて、俺の部屋に帰るのでいいですね」


傲慢に言い切って、私の手を握り直す海東くん。
私は促され、つんのめるように歩き出す。

雨はまだ止まない上に、私たちは傘を持っていない。
パンプスの靴擦れは痛くて、身体はクタクタ。せめて、ゆりかもめの乗車を提案しよう。

それでも、海東くんと手をつないだ私は満ち足りていた。
指と指を絡ませる。海東くんがしっかりと握り返してくる。

嬉しくて見上げると、雨に髪を濡らした海東くんが鮮やかに微笑んだ。






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