ひねくれ作家様の偏愛
エピローグ



「早く終わらないですかね」


海東くんが鬱々とした声で言う。
用意されたホテルの一室、一人掛けのソファの肘掛に頬杖をつき、気だるげなため息。

雑誌のインタビューは海東くんにとって嬉しいものじゃなさそうだ。


「そう言わず。ね、ほら編集の人来るよ」


後ろの椅子に控えた私は、こそっと海東くんに言う。

本日のお仕事はちょっとオシャレ系な書評雑誌のグラビア付きインタビュー。

こんなお話をいただけたのは、『ともし火』での海東くんの連載が好評だからだろう。
連載開始からまだ3ヶ月しか経っていないというのに。

海東くんの連載は『アフター・ダーク』のシナリオライターの新作と最初はごく一部で話題になっただけ。
しかし、ネット評から火がついてじわじわと『ともし火』の部数が伸びてきている。

おまけに知る人ぞ知る彼の容姿。

センチメンタルなストーリーの恋愛小説家が、端正な顔とモデル並のスタイルだとしたら、メディアは食いつくに決まってる。

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