ひねくれ作家様の偏愛
海東くんが渋々抱擁を解くと、絶妙のタイミングでドアがノックされた。


「お待たせしましたぁ」


インタビュアーの編集さんと、カメラマンが入ってくる。
海東くんががらっとよそゆきの表情を作る。


「いえ、今日はよろしくお願いします」


私は何事もなかったように、背後の椅子にもどり、彼の姿を眺めた。

握手を交わし、インタビューを受け始める海東智は、なんだか見違えて大人の男に見えた。



ずっと、傍にいた私の大作家サマ。

ひねくれ者の彼は、少し大人になって、新たな舞台へ羽ばたこうとしている。

私にできることは、それを見守るだけ。

でも、彼が立ち止まりそうになった時、羽を畳んでしまった時、私は変わらず傍にあろうと思う。
卑屈な気持ちは消えた。
一生、何があっても海東智から離れない。

それができるのは私だけだという自負がある。

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