ひねくれ作家様の偏愛
「私、会社に戻るよ。原稿は必ず読んで連絡するから。明日以降になっちゃうとは思うんだけど」


「そんなに帰りたければどうぞ」


素っ気なく言い捨てて、彼はリビングを突っ切り、仕事部屋のドアをたてきった。

あーあ、結局怒っちゃった。

別にご機嫌取りなんかしなくていい。
しているつもりもない。

書かなくなって、うちの専属契約を切られたって、それは本人の責任だ。

海東くんに書き続けてほしいと願うのは私のエゴ。
単純に割り切れない私の我儘。

我儘同士なんだから、お互い様だ。

私は鞄に原稿をしまう。
合鍵を手に彼の部屋を後にした。






< 24 / 274 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop