ひねくれ作家様の偏愛



*****



俺は飯田と向かい合い、心底嫌な顔をして見せた。

予感的中。

っていうか、千弥さんが出て行ってから15分くらいしか経っていないぞ。
大方、千弥さんが俺んとこに来てるって知って邪魔しにきたのだろう。
そして、千弥さんとは偶然を装い、うちの玄関先で遭遇。ちょっと会話して別れてきたってとこだろう。

知ってんだよ、あんたのその薄ら寒いお邪魔虫精神は。


「俺、出かけるところなんですけど」


玄関先でヤツをねめつけ、一応言ってみる。


「そんなぁ、冷たいことおっしゃらないで」


安いスナックのママみたいな口調で、俺の胸をばしっと叩くアホ。


「仕事の話で来たんですから。はい、お邪魔しますよ~」


押し戻されるかたちで、飯田の部屋への侵入を許してしまった。

こいつのマイペースは本当にムカつく。わざとやってるところがムカつく。

千弥さんに言わせると『智くんも似たところあるよ』となるのだけど、こいつのやり口にはいつも悪意しか感じない。
< 247 / 274 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop