ひねくれ作家様の偏愛




翌週のうららかな昼下がり。
私が昼食を済ませフロアに戻り、自班の島に着くとアシスタントの女子社員・小松梨香が待ち構えていた。


「桜庭さん、中井先生から挿絵イラストのデータ届きました」


待ちかねていたブツがメールにて到着の模様。
私はパソコンのディスプレイに添付の画像を広げる。


「ありがと。急に海外とか困るよね、中井先生。締め切り忘れとかありえないし」


「ってことは、この挿絵イラスト、タイで描いたんですかね。うっわー、馬鹿だー」


入社二年目の小松は遠慮なく言う。
くっきりコテでカールをつけた髪を巧妙なヘアアレンジでポニーテールにした小松。
同じ会社に入社したのに、彼女と私の戦闘力の差は歴然だ。


「中井先生に内山田先生の本のイラスト任せちゃったけど。心配になってくるよ、こういうの何度もあると」


「ホントですよね。内山田先生、出版不況の現代に降り立った神ですもん。うちとしては変なミスで他社のライトノベルに逃げられたくないですね~」

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