ひねくれ作家様の偏愛
「そういう人だから気にしないで。後で私から連絡しておくから」


「あ、後でじゃなくて、すぐに折返しさせろって言ってました」


眉をひそめ、唇を尖らせる彼女に見えないように、私はこめかみを押さえた。

だーかーらー、忙しいんですけどー。

鞄を持ち、フロアを出ながら海東くんに発信する。

コールたっぷり8回目で海東くんが出た。


「遅いですよ。折り返しが」


「ごめんごめん」


遅いのはきみが受話をタップするタイミングだよ。
どうせ、ギリギリまでテーブルかなんかに置いて見てたんでしょう。
この根性曲がりのひねくれ男爵!

口に出さない悪態はお腹の中のみで叫ぶ。


「先週の原稿の件だよね」


「わかってるなら、なんで連絡しないんですか?読んでないとか?」

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