ひねくれ作家様の偏愛






作家の酒井先生との打ち合わせを終え、オフィスに戻るとすでに午後も遅い時刻だった。定時間近のフロアは変わらずあわただしい。

このオフィスで定時に上がれる人間なんていない。フレックスのせいもあるけれど、仕事が午後に集中する傾向はある。
女子力高めの小松ですらパソコンのディスプレイと睨めっこ中だ。

私の所属するライトノベル編集部の島にたどり着くと、直属の上司で編集長の鈴村さんと文芸誌『ともし火』の木原編集長が話していた。

メディアミックスグループは大きく2グループに分かれている。
ゲーム雑誌『ライナー』の編集部とライトノベル『ライナーズ文庫』の編集部。
そして、がらっと変わって文芸誌『ともし火』と文学書籍を発刊する編集部。

ゲーム関連の『ライナー』グループの方が計4班編成と規模は大きいけど、暗黙の了解として『ともし火』グループの方が各上だ。
後付けの分野なので、出版業界経験者で固めているせいもあるだろう。


「桜庭、お帰り。どこへ外出?この前、名刺渡したキャバ嬢とでも会ってた?」

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