ひねくれ作家様の偏愛
②
土曜日の昼過ぎ。私は本気で今夜の“打ち合わせ”に悩んでいた。
行きたくない。お腹痛いとか言っちゃおうかな。
イヤイヤ、子どもか、私は。
お腹弱い子か。
何が嫌って、海東くんが前回のカレー店での別れ際に言ったことだ。
『たまには小奇麗な格好で来てください』
確かに、今日は気ぃ抜いてますよ。
だけど、普段彼の家に行く時は、小奇麗に……してるつもりだけど。
一応、パンツスーツで、上は無地のカットソー。そりゃ、靴はパンプスじゃなくて、ぺたんこバレエシューズだけど。
『あの、なんちゃってスーツみたいなのやめてくださいね。もう少し女子らしい服装で』
『ドレスコードあるっけ?きみのうち』
『あります』
『あ、そうなの』
『あります。以上』
そう言いきって海東くんは帰って行った。