ひねくれ作家様の偏愛




土曜日の昼過ぎ。私は本気で今夜の“打ち合わせ”に悩んでいた。

行きたくない。お腹痛いとか言っちゃおうかな。

イヤイヤ、子どもか、私は。
お腹弱い子か。

何が嫌って、海東くんが前回のカレー店での別れ際に言ったことだ。


『たまには小奇麗な格好で来てください』


確かに、今日は気ぃ抜いてますよ。
だけど、普段彼の家に行く時は、小奇麗に……してるつもりだけど。

一応、パンツスーツで、上は無地のカットソー。そりゃ、靴はパンプスじゃなくて、ぺたんこバレエシューズだけど。


『あの、なんちゃってスーツみたいなのやめてくださいね。もう少し女子らしい服装で』


『ドレスコードあるっけ?きみのうち』


『あります』


『あ、そうなの』


『あります。以上』


そう言いきって海東くんは帰って行った。
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