ひねくれ作家様の偏愛
「ワインでも開けますか?」


キンキをシェアしながら海東くんが聞いてくる。私は慌ててかぶりを振った。


「仕事中だから遠慮する」


面白く無さそうに鼻を鳴らし、海東くんが私の前にお皿を置く。
立ち上がると冷蔵庫からペリエの瓶を出してきて、私のグラスの前にどかっと置いた。
ワインオープナーをコルクに突き立て、自分のグラスにだけ白ワインを注ぐと、ぐいぐいと飲みだした。
乾杯を強要されなかったことだけ、安心する。


「え、美味しい!すごいね!」


一口パスタを食べ、すぐに感想が出た。
本当にお世辞抜きに美味しい。
キンキも身はふんわりとした仕上がりでハーブが利いている。美味しい。


「感動しちゃったよ。あんまり美味しくて。海東くん、こんな才能もあるんだ」


「バカみたいに感心しなくても、別にこの程度、誰だって作れますよ」


海東くんはさも当然と言うように頷く。
小鼻がピクピクしているので、誉められて喜んでいるのがバレバレだ。
そんな小さいクセもわかる程度に付き合いが長くなっていることに驚いた。
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