ひねくれ作家様の偏愛
*
「桜庭さん」
呼ぶ声にゆるゆると目を開くと、薄墨色の室内に海東くんが立っていた。
壁の時計は午前4時半を指し、私の膝には毛布がかかっていた。
「出来たんで、見てもらえますか」
「海東くん……」
海東くんは落ちくぼんだ目で私を一瞥すると、電気ポットを持ってキッチンに向かって歩いて行った。
水道を捻る音。ポットの底に弾ける水音。
起きて待つつもりだったのに。
寝ちゃうなんて情けない。
私は寝起きの目をこすり、外の薄明かりを頼りに原稿に目を通し始めた。
小一時間ほどでさわりは読めた。
少し迷ったけど、感想の代わりに言う。
「どうしても私と打ち合わせしてくれる気はないんだね」
「桜庭さん」
呼ぶ声にゆるゆると目を開くと、薄墨色の室内に海東くんが立っていた。
壁の時計は午前4時半を指し、私の膝には毛布がかかっていた。
「出来たんで、見てもらえますか」
「海東くん……」
海東くんは落ちくぼんだ目で私を一瞥すると、電気ポットを持ってキッチンに向かって歩いて行った。
水道を捻る音。ポットの底に弾ける水音。
起きて待つつもりだったのに。
寝ちゃうなんて情けない。
私は寝起きの目をこすり、外の薄明かりを頼りに原稿に目を通し始めた。
小一時間ほどでさわりは読めた。
少し迷ったけど、感想の代わりに言う。
「どうしても私と打ち合わせしてくれる気はないんだね」