ひねくれ作家様の偏愛
「どっちがとか……ないけど。協力して、彼の作品を作り上げたいわけだから」


「じゃあ、おまえが下僕っておかしいだろ。なんでそうなるかなぁ。桜庭が受け入れちゃってるのがマズイんじゃない?」


飯田は忠告っぽく言っているけれど、所詮人事。言いながらニヤニヤと笑う。

私は仏頂面で押し黙る。
くそう、言い返せない。
私が海東くんに甘いから、彼がつけあがるのだ。
飯田はたぶんそんなことを言いたいのだと思う。


「桜庭は男を意識しなさすぎ。俺がおまえの立場なら、あの坊ちゃんの気持ちを逆手にとって、うまいこと転がせっけどな」


「そんなこと言って。おまえと海東くんうまくいってないじゃん。私が間に入らなきゃ、ダメじゃん」


「そりゃ、俺と海東センセは男同士で、好意が発生する可能性がないから」


「私にだってないよ」


「鈍感」


言った飯田は少しだけ真剣な瞳をしていた。
真面目な空気は一瞬ですぐに霧散した。
色あせた茶髪をかきあげ、斜に構えた笑顔で言う。
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