ひねくれ作家様の偏愛
私と飯田の飲み会はほどなくして終わった。
並んで居酒屋の階段を降りる。

市ヶ谷駅はすぐそこだ。


「じゃ、私こっちだから」


「おう、またなー」


そう言いながら、市ヶ谷駅ではなく、麹町方面へ歩き出す飯田。


「いやいや、あんた酔ってる?駅こっちだから」


飯田の肩をがっしりとつかむ。
そこそこ身長のある私と飯田は5センチ程度の差だ。


「麹町からメトロに乗ると一本で帰れるんだよー」


「は?麹町は有楽町線でしょ。市ヶ谷からだって乗れるっつうの。わざわざ歩く理由ないだろ。その心は!?」


吐け!とばかりに後ろから首を絞めると、飯田が私の腕をタップする。


「ギブギブ!……本音は麹町に好きなラーメン屋があるもんで。締めに行こうかと」


「なにそれ、ズルー。私も連れてけー」


さらに首を絞めると、飯田がうめく。

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