ひねくれ作家様の偏愛
「隠れ家的店なんだよ!ってか、アラサーが締めのラーメン食ってたら、まずいだろ!」


「そんなの気にしてる女が、あんな小汚いゲーム会社の編集部にいるかっての」


いい年の2人が男子中学生みたいにじゃれていても、通りを行き過ぎる人たちは気にも留めない。
みんな家路を急ぐため、足早に駅に吸い込まれていく。

いや、私の目に立ち止まる人物が映った。


あれは。

なんで、こんなところにいるんだろう。


海東くんは、市ヶ谷駅のガードレール前でこちらを見ていた。
もしかすると、横を通ったのだろうか。
気づかなかった。

しかし、なぜここに?


「桜庭?」


私の動きが止まったため、飯田が私の腕を引き剥がす。

それを合図としたみたいに、海東くんは踵を返し、改札を抜けて行ってしまった。

海東くんがいた。
見間違いではない。

整った顔立ちに氷のような無表情を貼り付けた海東くん。

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