ひねくれ作家様の偏愛
「そういうんじゃないから」


「付き合ってもいないのに、路上でベタベタと見苦しい……」


苛々とした声で、海東くんが立ち上がる。
ワークチェアが勢いコロコロと音を立て後方に移動する。

振り向いた海東くんは、いつもに増して怒った顔をしていた。


「それとも、俺にはわざと隠してるとか?」


「隠す理由なんかない」


「どうだか」


憎々しげに言うと、彼が長い脚で大きく近づいてくる。
あっという間に私に迫ると、ドアに追い詰める格好で見降ろしてきた。


「なに、海東くん」


後ろ手にドアを閉めてしまったことを後悔する。
逃げ場をなくしてしまった。


「別に、俺が近付いたって問題ないですよね」


問題はある。
こんな状況、おかしい。
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