ひねくれ作家様の偏愛
年上をからかうのはやめなさい。
私はきみの担当だよ。
セックスしたいだけなら、いくらでも相手がいるでしょう?
きみの遊び相手の中にだって、きみに処女を貰ってもらいたい女の子はいるはず。

異論反論、いくらでも出てくる。
だけど、それらすべてを口に出せなかった。

驚いていたし、慌てていた。
どう反応すれば海東くんの機嫌を損ねずに済むだろうか。
せっかく、一作目も間もなく完成というところなのに。
ここで投げ出されては困る。


『俺の書くものの役にたつのが桜庭さんの仕事。それは、あんた自身が言ってることだ。ようやく、身を持って役立てる。そうは考えられませんか?』


ばかばかしい。
そんな詭弁、ない。

海東くんはからかっているようにも見えたし、大真面目にも見えた。


『まあ、断ってくれてもいいですよ。好きな男でもいたら、面倒だし。……でも、もし受けてくれるなら、『アフター・ダーク』のノベライズはこの後も全部俺が書きます』


私はぎくりと固まった。

『アフター・ダーク』一作目のノベライズは口説けたものの、二作目、三作目のオファーは多忙を理由に断られていたのだ。
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