初恋しました
この狭い幅、すぐ後ろは本棚。
(ぶつかる……っ)
ぎゅうっと目を瞑ると、予想外に何か柔らかいものにわたしは倒れ込んだ。
ふわりと感じるシトラスの香り。
(、え………?)
痛く、ない……?
そっと目を開け、上に視線をあげてみて息を呑んだ。
目の前にはサラサラの栗色の髪と切れ長の瞳。
まるで黒い宝石みたいな瞳にわたしが映っていて、心臓がドキッと跳ねた。
「大丈夫?」
わたしに向けられたであろう言葉に、叫びたいぐらい嬉しくなる。
でも次の瞬間には自分がやってしまったことを思い出してしまい。
「あっ、ご、ごめんなさいっ」
バッと音が出そうなぐらい慌ててわたしは木嶋くんから離れた。
こんなに近い距離は初めてで、心臓が痛いぐらいに動き出す。
呼吸をするのが苦しくて、思わずまだ手に持っていた本をぎゅっと抱きしめた。