深夜26時はキミと一緒に、

音楽室の鍵をかけて職員室に戻ると、そこには小田君がいた。

「よー、早苗か。今日もピアノか?」

「うん。小田君は?」

「俺?あー俺はさぁ、論文。書かないと、いい加減ヤバいの。期限間近でさー。」

小田君らしい。ふと笑みが溢れた。

「笑うなよ。こっちは必死なんだぜ?」

「うん、ごめん。頑張ってね、論文。」

「おう。」

威勢よく返事をした小田君はpcに向かってもくもくと指を動かせ始めた。
小田君は、大学からの仲で同期生として今でもよく相談に乗ってもらう事もある。
この学校で唯一、敬語で話さない相手は彼だけである。

「それじゃぁ、お先に失礼します。」

「待って。早苗、ちょっといいか?」

小田君の、珍しく真剣な声に足が止まった。

「なに?」

「昨日、早乙女先生に送ってもらったらしいけどお前酔ってたろ?...またあの癖、出たんじゃないよな?」

...、小田君は勘が鋭い。
あの後のことは覚えてないけど、多分...出たんだと思う。

早乙女先生にも、きっと迷惑をかけた。

「...ぇっと、送ってもらう途中で寝ちゃったから。大丈夫だったと思う。」

「...、ふーん?そう。ならよかったじゃん?」

そういいながら、少しだけ納得していないような顔を小田君はしていた。


本当のことなんて...。


言えるわけがないと思いながら、私は職員室を後にした。
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