深夜26時はキミと一緒に、
「ちょっと、あんた。痴漢は犯罪行為ですよ。女の人も困って......、え?」


「...へ?さ、早乙女...先生?」


信じられないと、本気で思った。
でも本当に目の前にいるのは早乙女先生で、私を助けるその姿はまるで...

王子様のようだった。


「早苗先生...?」


彼も驚いた顔をしたが、私の腕を掴むとちょうど駅に着いて開閉したドアに向かって人混みをかき分けた。


私の腕を掴む彼の腕がとてもたくましく思えて...。

そしてホームに着くなり、早乙女先生は私の体を強く抱きしめた。

「...馬鹿!どうして、助けを呼べなかったんですか!!もし俺が助けなかったら...、今頃...ッ!」



「...ッ、ひっく...ッ!」

心からの安堵のあまりに、堪えていた涙がとめどなく零れる。


「ぇ、え?ぁ、あのッ、泣くほど?」


ちがう...、怒ったのが怖かったんじゃないの。

「ち、ちが...、あなたがいなかったら..私..。怖くて..怖くて、しょうがなくて...!」



何よりも暖かくて落ち着く早乙女先生の胸に、いつまでも抱かれたいと思った。


知らないうちに、私は腕を彼の背中に回していて、しわができるんじゃないかって位に握りしめていた。


「早苗先生......。」

いつまでも溢れ出した涙が止まらない。

彼のシャツが涙で濡れ始めたことにも気付かずに、私はずっと泣いていた。


「ごめん...怖かったんだよね。もう、大丈夫だから。」


ポンと私の頭に手を置いたその手が、嬉しいと感じるなんて。


「....うん。」
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