楔
二人にお別れを告げていると
コツコツ…コツコツ…
『!?』
『…瑠那ちゃん…。』
阿里沙と直樹のご両親が
此処へ来た…。
コツコツコツコツッ
パシンッ
音が耳に届く速さと遅れて、
頬に熱を感じました。
ここは泣く場面か…
ビックリする場面か…
今の私にはどちらとも
当てはまらなかった。
今ある感情は“無”だった…。
『何で、あんたが此処に居るのよ!!
ここはあんたが来ていい場所じゃない!!
あんたさえいなければ、今頃家で家族
全員で幸せに過ごせてたはずなのに!!
うちの阿里沙を返してよ!!』
ウッ、ウッ、ウワーン…
阿里沙の母親は子供のように悲しみに
うちひがれて泣いてしまった。
阿里沙の母親はその場でうずくまり、
声をあげて泣き続けた。