楔
『…見つけた……。』
目の前の男に突如吐かれた言葉…
でも私はこんなに綺麗な顔の人とは
出会ったことがない。
会っていたとしても、
きっとすぐに忘れてしまう癖があるから
記憶から消し去った人の一人かも…。
でも、
やっぱり知らない…。
『貴方は…誰ですか…?』
男が一瞬目を大きくさせた気がするけど
見間違いだよね。
『まず名前を名乗るなら自分から言うのが礼儀じゃないですか?』
男に若干強く言うと
男は考える素振りを見せて、
『…龍崎レオ…。』
少し膨れっ面をしながら
しぶしぶ呟いた…。
(この人、表情豊かだな…。)
男の醸し出す雰囲気と色々な表情を見てると、
親友二人の面影を見かけた気がした…。
無意識にせつない気持ちで一杯になって
過去の出来事が脳裏をよぎり、
嘲笑を浮かばせた。
その瞬間を男が静観してたとは
気づかずにいた。