楔
生まれて初めての親友は
家族より大事な存在になっていました。
里美はきつい性格をしていて
外見だけだと普通に悪者や不良に見えたりしてしまうので、よく勘違いされてるみたいでした。
だけど、本当の性格は優しくて
友達思いで、寂しがり屋で甘えん坊です。
何時も何時も何をするのも一緒でした。
喧嘩をするときもあったりしたけど、
私達は本当の姉妹のように
仲がよかったです。
色々なことも二人でやっていきました。
おままごと、スーパーヒーローの妄想、
カラオケ、お出掛け…。
一番印象に残っているのは、
急な坂道を車より速いスピードで下って
それを目撃されて先生に叱られたことです。
でも、楽しかったよね…。
二人は誰にも言えないような
秘密を二人の間では普通に言えたよね。
本当に良い日々過ごしてたよね…
あの日までは…。
ある休日の事、
何時もみたいに里美と公園で遊んでると
小学校の後輩たちが公園でサッカーをしに
遊びに来ていました。
サッカーボールを見た里美はおもむろに
平然と一言…
『あのサッカーボール盗んでみてよ…。』
『…えっ…。』
『簡単なことじゃない?なんか、スリルあって楽しそうじゃん♪』
最初は戸惑っていた私ですが、
里美の喜ぶ顔がみたくて
なんの戸惑いもなく、後輩たちのサッカーボールを取り上げて、その場から一目散に里美と一緒に逃げ出しました…。
自転車で逃げている途中
隣では絶叫系の乗り物にでも乗っているかのように、『イエーイ♪』『ヒャッホー!!』
とかなど叫ぶ私の親友…。
サッカーボールを取られて焦っている
後輩たちを見て、
里美の喜ぶ顔が見れた嬉しさと
自分のやってる最低な事への
罪悪感、憎み、後悔する自分…。
自分の矛盾した心情に自分自身に
戸惑いました。