艶楼の籠

「本当にありがとうございました!では、お元気で!」


私は、店の前で4人に見送られている。
店を後にする客人の視線が痛い。


「こんなに、元気に帰って行く客は初めて見たぞ。」


椿は、納得がいかないような顔をしている。


「まぁまぁ。いいじゃないかい。椿がそれまでの男だったってことだよね?」


「てめー!どの面下げて言ってやがる!」


また、椿と櫻生の言い合いが始まってしまった。


「あの…。」


「やれやれ…。すまないね…見苦しいところばかり、さらしてしまって…。雅さん、お気をつけてお帰り下さいね。また、会える日を楽しみにしていますよ?」


桔梗が私の手を取り、そのまま口づけた。


「っ!???」


その様子を見ていた椿と櫻生は、驚いた顔をしている。


「「桔梗っ!!抜け駆けか!!」」


私は、恥ずかしくて赤面している姿をさらすまいと、逃げるように走った。


「では、またっ!!!!」


恥ずかしい!あんなことをされたのは初めてだ。


「また、会おうなー!!」

櫻生らしき人の声が聞こえた。
私は、立ち止まり振り返って頭を下げて走った。

昨晩の出来事は、もう二度と無いと思いながら家路についた。
< 17 / 31 >

この作品をシェア

pagetop