艶楼の籠
「本当にありがとうございました!では、お元気で!」
私は、店の前で4人に見送られている。
店を後にする客人の視線が痛い。
「こんなに、元気に帰って行く客は初めて見たぞ。」
椿は、納得がいかないような顔をしている。
「まぁまぁ。いいじゃないかい。椿がそれまでの男だったってことだよね?」
「てめー!どの面下げて言ってやがる!」
また、椿と櫻生の言い合いが始まってしまった。
「あの…。」
「やれやれ…。すまないね…見苦しいところばかり、さらしてしまって…。雅さん、お気をつけてお帰り下さいね。また、会える日を楽しみにしていますよ?」
桔梗が私の手を取り、そのまま口づけた。
「っ!???」
その様子を見ていた椿と櫻生は、驚いた顔をしている。
「「桔梗っ!!抜け駆けか!!」」
私は、恥ずかしくて赤面している姿をさらすまいと、逃げるように走った。
「では、またっ!!!!」
恥ずかしい!あんなことをされたのは初めてだ。
「また、会おうなー!!」
櫻生らしき人の声が聞こえた。
私は、立ち止まり振り返って頭を下げて走った。
昨晩の出来事は、もう二度と無いと思いながら家路についた。