艶楼の籠
何度も何度も唇を重ねてくる。
言葉は、なくても会話をするように、吐息が漏れる。
「ん……っ……ふ…椿さんっ…!」
「…っ……なんだ?嫌か…?」
気がつくと、椿の胸元を強く押していた。
それを拒否していると受け取ったようだ。
「頭がクラクラして…。」
「そうか、それじゃあ少し横になろうか。……こっちへ来い。」
どこまで、私をドキドキさせれば気が済むのだろう。
「今日は、自分で着替えるんだぞ?」
意地悪な笑みを浮かべ私を誘ってくるように、手を取る。
「やっぱりこの間は…椿さんが着替えさせてくれたんですかっ?!」
「内緒だ。……帯取るぞ?」
ゆっくり、帯に手を掛け外していく。
「あ…。」
床に帯が落ち、胸元がはだける。
「…顔真っ赤だぞ?」
「1人で着替えさせてくださいっ!」
はずかしさのあまり、そんなことを口走ってしまった。
「それは、無理だ。前聞いただろ?客人を1人にさせると、処罰されるんだ。」
この間、櫻生さんと桔梗さんが言っていたこと…。
また、どこかで誰か見ているかもしれない。
「それでは…少しでいいので、後ろむいていてください…。」
「んー…。」
椿が後ろを向いたことを確認すると、私も背を向け、着替え始める。
サラリとした肌触りの寝間着を手にとり、腕を通す。
身体の線がうっすらと見えてしまいそうな生地の薄さ。
―グイっ―
「きゃっ!!」
一瞬何が起こったのかわからなかった。
後ろから、抱きしめられている。
「すまねぇ。一瞬だけ、雅の着替えてる姿見ちまった…。そしたら我慢できなくなった。」
まだ、袖を通しただけの寝間着。
早くなる鼓動。
椿の身体から伝わる熱。
「あの…椿さんっ!私まだ…着替えてる途中で…。」
「知ってる。こんな…色っぽい姿見たら……。」
―ドサッ―
抱きつかれたままの姿勢で、椿に押し倒された。
私の背中が椿の胸元と触れ合っている。
押し倒された勢いで寝間着がはだけ、肩が露わになってしまう。
顔を見られない姿勢なのに、やけに恥ずかしい。
椿の指先が私の唇に触れる。
「この唇から、どんな可愛い声が出るのか聞いてみたくなるなぁ………なぁ。お前はどんな声でなくんだ?」
甘い声で囁かれると、身体が熱くなる。
そんなに、色っぽい声で囁かないでほしい…。おかしくなりそうだ。
「そ、そんなのわかりませんっ!!とりあえず…はっ、離れて下さいっ!!」
「嫌だ。……ちゅっ…。」
「あぁっ…!」
耳元に口づけされ、指は唇をなぞっている。
「…いい声出せるじゃないか。雅…可愛いよ。」
こんな口説は、たくさんの女に使ってる言葉だというのに…。
胸の奥が締め付けられる。