君のために歌う歌
宙子は、郷愛との無言が苦ではなかった。
楽しくしゃべる時はしゃべるし、しゃべらず、お互い思い思いのことをしていても邪魔をしないし気を使わないこの関係。
みんなには電波と呼ばれている郷愛だが、宙子は郷愛と前後の席で良かったと思っている。
前の席が郷愛でなかったら、自分はクラスに友達がいなかっただろうなと思う。
「ちょっとかわや行ってくるわ」
トイレをわざわざかわやと言って郷愛は席を立った。