君のために歌う歌
引き出しを探すと、すぐ虫刺されの軟膏を見つけた。


「あったよ。はいどうぞ。」



宙子は陽翔にそのチューブを渡した。



「ありがとう!!!終焉の地も悪くないね!!」

 


郷愛用語を早速使う陽翔に、宙子はさらに少しだけ郷愛に嫉妬した。




「それは私が持ってきたんだけどね。」




悔しさからか、トゲのある言い方をしてしまった。




「あぁそうなんだ!!さすがひろは女子力高いなぁ。」



陽翔はぱっと顔をあかるくして言った。



宙子は、屈託の無いその様子に、ちょっとした事で親友を妬んだ自分がいやになった。



「べ、別に女子力が高いわけじゃなくて、花の世話をしてるとやっぱり蚊に刺されちゃうからね…」




「じゃあ、草木を守る力かな?」





陽翔はフフ、と笑うと、じゃあこれ借りるね、と軟膏を腕に塗り始めた。
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