君のために歌う歌
近くで見ると、長いまつげの向こうの色素の薄い瞳はまるで宇宙のようだった。





陽翔は固まった宙子の手をとり、その指先の軟膏を、首元の蚊に刺されたところにもっていった。



指先の軟膏の冷たさと、陽翔の体温がまじる感覚が先程までより強く感じて、宙子は顔から火が出そうだった。




そんな宙子を見ながら陽翔は薄く笑って言った。




「俺の血、美味しいみたいだね。これで18か所だ。」



「わ、私はヴァンパイアとかじゃないから!」


なんとかツッコミを入れると、陽翔は「よかったー」と言いながら立ちあがり、脱いでいたポロシャツを着た。


そしてくるりと宙子の方を向いて言った。



「まぁ俺は、ひろになら血を吸われて殺されても本望だけどね。」




冗談か本気か分からない。




「な、何言ってるの!陽翔ファンがみんな泣いて私を銀のピストルで撃ちに来るよ!!」



宙子は思わず郷愛にするようなツッコミをしてしまった。



陽翔は楽しそうにハハハと笑った。






< 133 / 303 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop