君のために歌う歌
「ヒロ、クォーターなの?!」


「あれ、言ってなかったっけ?」


「聞いてないよ!確かに背も高いし色素薄いし」



イケメンだし……は小声で言った。


「ごめん、続けて。」






陽翔はフフっと笑うと話し始めた。



「小さい時は外人!ってイジメられたりもしたよ。

だから俺はスポーツも勉強も、馬鹿にできないくらい頑張った。


そしたら、中学あたりからは媚びてくるやつと、キャーキャー言う女子ばかりになった。日本でもアメリカでもね。」





容易く想像できた宙子は、自分もそんな女子の一人のようなものだから黙っていた。



「どうせまた転校するんだ……と思うと、どうでも良くなるんだ。学校なんて。

上手く笑えてればいいや、って。

でもそんな気持ちはやっぱり無理があるんだ。

だから俺は素直な気持ちだけを歌う。

ギターを弾いて歌ってると、俺は本当に俺になれる。」






宙子は、ギターケースをちらりと見た。

ギターは相棒のように見えた。
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