君のために歌う歌
全身から力が抜けて、食べかけのりんご飴が手から滑り落ちて、ハッとした。



(そ、そうだ。ヒロに彼女がいるのは知ってたんだ。何を今更……関係ないじゃん。)



そう思うようにした。




何故か、涙がすうっと頬をつたった。



(あれ、おかしいな。泣くことなんて何もないじゃん。)




『ほんと?俺も行くから会えるといいね!』



宙子の脳裏に、陽翔のLINEがよみがえる。





私、特別ではなかったんだ。




胸が締めつけられる。


呼吸が浅くなって、顔が熱い。目頭が熱い。



そこへ、


「ふぅーヤレヤレすまんすまん。トイレ鬼混みだったわぁー
花火間に合って良かったー。」


何も知らない高橋が戻ってきた。
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