君のために歌う歌
「喧嘩なんかしたことなかったんだけどな、俺がやらないと宙子がやられると思ったんだ。
結局、お互いボロボロになって、なんだか金子とは仲良くなったんだ。
男って変だよなぁ。」
高橋は懐かしそうに笑った。
宙子も、何故か高橋と金子が突然仲良くなったのを思い出した。
懐かしい。
そんなに昔から、私はこいつといるんだな、と思うと、暖かい気持ちが戻ってきた。
「その決闘の後にさ、金子帰ってから、俺見つけたんだよ、みーちゃん。
覚えてる?」
みーちゃん。そうだ、そんな猫がいた。
三毛猫の、子猫。
宙子は小さく「うん。」と答えた。
「ちっちゃくて可愛くて。
でも俺んちアパートだから飼えないし……それよりも何よりも宙子に見せたいと思った。
あんときからだよなー仲良くなったの。」
集団登校の班は一緒でも、全然話したことのなかった2人が、急激に仲良くなったのは、みーちゃんをここでコッソリ飼い始めてからだ。
「給食の残りのとかこっそり持ってきてな。
どっちが抱っこするかで喧嘩したりとか。」
宙子は当時のことを思い出してフフフっと笑った。
「おー。やっと笑ったか。安心安心。」
「ありがと、高橋。」
宙子は泣きつかれた顔で、ニコッと笑った。
花火がその笑顔を照らし出していた。