君のために歌う歌
(高橋が私を好きだったなんて……全然気がつかなかった。)




宙子は、顔を背けている高橋を見た。




見慣れた首筋が、何か愛おしい。



「高橋。」



「なんだよ。」



「ありがとうね。」



「おうよ。」



「でもごめんね。」



「おう。」



「私……陽翔がすごく好き。」



「……知ってるわ。」




そう言うと、高橋は宙子の方を向いた。




「俺はな、お前の幸せを願ってんだ。

大丈夫だ。お前は。

だから、もっと自信持てよ。」



真剣に言う高橋に、宙子は、またポロリと涙を流した。



「ありがと、高橋。」



「いいって事よ。」




高橋はいつもの調子に戻って言うと、んー、と伸びをした。



「じゃあ帰るか。立てるか?」


「うん、大丈夫。」




高橋は自然に宙子の手を取り、宙子は自然に高橋の手につかまって立った。




「好きになったのが高橋だったら良かったのにね。」



ポロリと言った宙子に、高橋は



「うわーそれお前、一番言っちゃダメなやつ!!!もう、アンタなんか知らないっ!」



後半は女の子のセリフのように言って走り出した。





「ちょ、ちょっと待ってよー!」



宙子が追いかけると、高橋はくるりとこちらを向いて笑った。
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