君のために歌う歌
2人が出ていったのを確認すると、陽翔は表情をふっと緩めた。



「すぐ助けられなくてごめん。大丈夫だった?何もされてない?」



陽翔は心配そうに宙子をのぞき込んだ。



同じ男性でも、陽翔の顔が近いのは、恥ずかしいけれど落ち着く。



「ヒロ……。」



安心からか、宙子は泣いていた。



みっともない、と思い、急いで浴衣の袖で涙を拭った。



「ごめんありがとう。大丈夫まだ何もされてないセーフセーフ。」




宙子は無理に笑ってみせた。



陽翔は、痛そうな顔をした。



「ごめんねひろ。せっかく来てくれたのに……。」


そう言って頭をぽんぽんとした。



そのぽんぽんだけで、全てが癒されるようなそんな気すらした。



「あいつら絶対許さない……出禁にしてもらわなきゃな。」


陽翔は低い声で言った。

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