君のために歌う歌


陽翔は、宙子がソフトクリームを食べながら次のバンドが演奏している間中、隣にいた。



ソフトクリームが溶けるように、陽翔はあっという間に宙子の嫌な記憶を楽しい記憶に替えてくれたようだった。







ソフトクリームを食べ終わる頃には大分宙子の気持ちも落ち着いていた。





それでも、さっきの剃り込みのザラザラした手のひらで掴まれた手の記憶が残っていた。




陽翔の手を見る。


大きく綺麗な手。

長い指。




(手、繋ぎたいな……)




宙子は少しだけ、陽翔に近寄り、触れないくらいの距離なそっと手を持っていった。



陽翔はそれに気づき、宙子の手を優しく握った。




暖かくて、優しいその手に、宙子の心から幸せが溢れ出るようだった。






同時に、自分の行動にも驚いていた。


(私はもっと、こんなに、大胆じゃない。)



バーテンダーのお兄さんは、コーラにお酒でも入れたんではないかと思った。





(私が、嫌なことされたから


陽翔は優しいから

手を繋いで居てくれるのかもしれない。


それでも、


今は、


幸せ。)
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