君のために歌う歌
照明が暗くなり、最後のバンド『grasp』が青い照明に照らされる。



今まで出演した誰よりも大きな拍手がわき、ほとんどの人が前に詰め寄せた。



「……オレも前行っていい?」

高橋が控えめに言った。




髪の長いボーカルはマイクスタンドに捕まりうつむいている。



宙子は高橋を見上げ、その後バーテンダーのお兄さんを見た。


ここにいれば大丈夫だろう。


「いいよ、行ってきなよ。」


宙子がそう言うと高橋は嬉しそうに、はねるように前の方へ移動していった。


ボーカルが顔を上げ、セクシーな声で歌い出した。


フー!とかホゥ!!と言った歓声が所々からわく。

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