君のために歌う歌



(綺麗な顔の人だな。)




宙子はそう思った。



中性的な、美人なお兄さんだった。




眼鏡で真面目そうな、しかしシュッとした顔立ちのギタリスト、



少しチャライ感じのベーシスト、



ワイルドなドラマー。




3人に囲まれたボーカルは、大天使に護られたキリストのように思えた。




神秘的な1曲を歌い終わると、何も喋らずに次の曲に進んだ。



疾走感のあるギターリフから始まったその曲に、歓声が上がる。



前方の客は手を突き上げ、腕を振ってノった。





(すごい人気だな。確かにかっこいい。)



好きとか嫌いとかではなく、完成度が高くて、プロっぽいな、と宙子は思った。
< 220 / 303 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop