君のために歌う歌
(綺麗な顔の人だな。)
宙子はそう思った。
中性的な、美人なお兄さんだった。
眼鏡で真面目そうな、しかしシュッとした顔立ちのギタリスト、
少しチャライ感じのベーシスト、
ワイルドなドラマー。
3人に囲まれたボーカルは、大天使に護られたキリストのように思えた。
神秘的な1曲を歌い終わると、何も喋らずに次の曲に進んだ。
疾走感のあるギターリフから始まったその曲に、歓声が上がる。
前方の客は手を突き上げ、腕を振ってノった。
(すごい人気だな。確かにかっこいい。)
好きとか嫌いとかではなく、完成度が高くて、プロっぽいな、と宙子は思った。