君のために歌う歌
スッと、隣に背の高い人が立った。


宙子は思わず身構えたが、それが陽翔だと分かりすぐに安心した。



(戻ってきてくれたんだ。)



陽翔は宙子の方を見なかったが、戻ってきてくれたことだけでも宙子は嬉しかった。



頭に残る、走り出せそうなかっこいいサビのメロディ。

graspのボーカルがシャウトする度に会場の熱量が上がるようだった。




陽翔は少し体を揺らしながら、真っ直ぐステージを見ていた。


宙子には、陽翔の思うことなんて計り知れなかった。

ただ、陽翔の目は真っ直ぐステージを見ていた。


口元は笑っていたが、眉間には少しだけ、シワがよっていた。
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