君のために歌う歌
「今日のこのお祭りは、コウくんの企画で、これだけ素敵なものになりました。」


ベースが、コウくんらしき人を裏から引っ張ってくる。

キャップをかぶった、印象の薄い、人当たりの良さそうな青年だった。

「みんなコウくんに拍手。」


観客はコウくんに拍手を送った。



「そして、素敵な出演者のみんな、ほら、出てきて出てきて!」


最初の男女2人、爽やかなバンドのボーカルが裏から出てきた。


「あれ、カゲハは?あ!おいそんなとこいないで早く早く!」

陽翔は見つけられるとてへぺろ、という顔をした。

graspと他の出演者に手招きされる。


陽翔は、ステージに向かい一歩踏み出した瞬間、宙子を振り返りウインクをした。


宙子は顔から火が出るかと思った。


バーテンダーのお兄さんはそれを目撃したのか、ひゅーう、と口笛を鳴らした。

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