君のために歌う歌

青葉GIG、終演後。

外に出ると、夏と言えど、夜の冷たい空気が宙子の頬を撫でた。



入った時はまだ明るかったので、昼間とは違った顔を見せたライブハウスの入り口と目の前の路地が、何か不思議な感じだった。


駅に向かって歩き出す3人。


「ちょっと足疲れたね。」


「お前ちゃんと下駄履いてきたのな。」


「あたしは脚が寒ーい!!!」


「お前はバカな。」



バカとはなんだ、と郷愛が高橋に背伸びをしてチョップをする。


宙子はそれを笑ってみていた。


と、




「ひろー!!!」





遠くから名前を呼ばれた。



宙子は振り返った。




声の主は分かりきっていた。





走ってきたのは、陽翔だった。
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