君のために歌う歌
力が抜けてしまうかと思った。


陽翔は顔を離すと、ただ微笑んでいた。



宙子は気を取り直し、


｢ただの地味朝顔だよー。｣


そう自嘲的に言った。


陽翔は意外そうな顔をしてから、またフッと微笑むと

｢それなら、誰も気がつかなくて、俺だけの朝顔でちょうどいいね。｣



宙子はボッと赤くなった。

墓穴をほったような気もしたが、そんなことを言われたの初めてだった。



陽翔は、宙子の肩を持って今度はくるりと反対を向かせた。

｢郷愛ちゃんと章が待ってるから、そろそろ行かなきゃね。｣


そしてまた耳元に顔を寄せると、言った


｢これ以上一緒にいたら、ひろを連れ去りたくなっちゃうから。｣


｢えっ？｣

宙子は振り返ったが、陽翔は、背中をトンと押して、手を振った。


宙子は、その意味を問い質したかったが、これ以上は何も話してくれなそうな陽翔に、


｢ピックありがとう。大切にするね。じゃあまたね。｣


と、手を振って、何度も振り返りながら郷愛と高橋の元に戻った。


何度振り返っても、陽翔は笑顔で手を振っていた。
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