君のために歌う歌
「何話してたん?」

と聞く二人に

「ん、別に。」

と宙子は誤魔化した。


二人は、何かを察したのか、それとも本当に興味がないのか、特に深く追求しなかった。



宙子は、Suicaをチャージするときに、手のひらの中のピックを、そっと財布に大事にしまった。




〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜




帰宅後、お風呂に入っている時も、ベッドに入り寝ようとした時も、様々な陽翔の姿がリフレインした。





真っ直ぐ前を見つめて歌う姿。



宙子を見て微笑んだあの瞬間。



「その子、俺のなんだけど。」




繋いだ暖かい手。




「可愛い」と囁いたその声。








宙子は枕をギュッと抱きしめた。



「明日を待ちただ眠るだけだ」……そのフレーズが頭をよぎった時、ブーブブとLINEが鳴った。


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