君のために歌う歌
廊下側の窓に、『1-C探偵事務所』の大きな文字。
前後のドアは、レンガ模様だ。
注釈で段ボールと書かれている。
「真里亜ちゃん上手だね!!」
陽翔がまた褒める。
「まぁね。」
と真里亜は得意気だ。
宙子もうんうんと頷く。
「……これで決定でいいかな?」
宙子は笑いながら言った。
みんなは、
「いいと思う!」
と元気に答えた。
爽やかな青春らしい時間に、宙子は幸せだった。
ーーその日は、それで解散になるはずだった。
陽翔はあっという間に帰って行ったが、女子は帰り支度に時間がかかっていた。
宙子は、一人だけ先に変えるのも悪いかなと思い、自分の支度は終わっていたが、時間がかかっているフリをして、3人を待っていた。
すると、久美に声をかけられた。
「ねぇ宙子ちゃん、時間ある?」
その声は、不穏なものを帯びていた。
しかし、断る理由は見当たらなかった。
宙子はただ、うん、と頷いた。